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管理職の残業代~管理監督者とは~
2020年8月3日
名古屋丸の内本部事務所 弁護士 渡邊 健司
一定の役職以上の中間管理職に残業代は支払わないという制度を採用している企業は少なくありません。当該企業の役職者自身,自分は残業代を請求できないと思い込んでいることが多いのですが,実は,中間管理職の場合,残業代を請求できることも多いのです。
労働基準法41条は,「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)について法定労働時間,休憩,休日に関する規定は適用されないと定められています。通常,この規定が,管理職の残業代を支払わない根拠とされています。
管理監督者とはどのような立場をいうのか,法律上は明確ではないのですが,単純な管理職という意味ではありません。
行政解釈では,管理監督者とは「部長,工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」で,実態に即して判断するものとされています。また,裁判例上は,管理監督者といえるかを判断する上で,経営方針の決定や人事についての権限を有しているか,出社退社時間等勤務時間について裁量があるか,残業代を支払わないことを正当化するだけの待遇(基本給,手当等)を受けているか等が考慮されています。
これらの観点から,課長級などの中間管理職の方で,管理監督者に該当する場合は多くはないと思われます。自分が管理職であるからといって残業代を請求できないとは限りませんので,一度弁護士に相談することをお勧めします。
管理監督者に該当せず,残業代を請求できる立場であっても,残業代を請求するためには時間外労働を行ったことを証明しなければなりません。しばしば,管理職であり残業代が出ないが故に,時間外労働の記録に無頓着となり,残業を行った証拠がないといったケースが見られます。労働時間管理は健康管理の観点からも重要ですので,自分の労働時間についてはしっかりと記録するようにしてください。