ここでは、制度や役職によって労働が残業(時間外労働)とされる条件や例外について説明します。
請求できるかのポイント
労働時間の証明
残業代を請求するためには、実際にどの程度残業をしたのかを主張、立証しなければなりません。会社が素直に残業時間を認めたり、証拠を差し出してくれるとは限りませんので、事前に証拠を集めておく必要があります。
以下に挙げる証拠は、それぞれに特徴があり、価値が異なります。事案によって必要な証拠が異なるため、弁護士に相談する前に、できる限り集められると、より効果的に交渉を行うことができます。
また、事前に集められないとしても、裁判や弁護士によって収集できるものもありますので、証拠がないからといって諦めずに、まずは弁護士にご相談ください。
タイムカード
日常的に扱うものですので、ご自身でコピーできる場合が多くあります。また、一部であってもコピーできていれば、会社が提出したタイムカードと照らし合わせることが可能になるため、改ざん防止につながります。
シフト表(勤務割表)
労働時間の予定であるため、残業の根拠となりえます。
パソコンのログデータ記録、タコメーター、ICOCA利用明細
実際にその時間就労していたことからデータが残ると考えられるため、残業の根拠となります。
業務日報
会社に対して労働者が労働時間などを報告するものですので、証拠となりえます。会社が関与しているので、ダイヤリー、手帳等よりは証拠の価値は高くなります。
ダイヤリー、手帳
業務を行ったことに対する労働者の記録ですので、上記の客観的な証拠に比べると信用性が低くなりやすいです。そのため、他の証拠と併用することが多いです。
以上の証拠はあくまで例であり、労働時間にかかわるものであればすべて証拠になりえます。
そのため、まずは弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
労働が「残業(時間外労働)」とされること
残業代の未払い(不足)があること
基礎賃金の算出(手当控除の制限)
残業代は、「基礎賃金」×1.25で算出されます(※)。ここでは、計算の元となる「基礎賃金」とは何かをご説明いたします。
法律上、「基礎賃金」は「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額」(労基法37条1項)と定義されています。
(※休日手当・深夜手当も含まれる場合は、異なる倍率になります)
通常の労働時間または労働日の賃金の計算額の算出方法
下記に労働時間数を乗じます。
- 時間給の場合には、その金額
- 日給の場合には、その金額を所定労働時間で除した額
- 月給の場合には、その金額を所定労働時間で除した額
家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は、割増賃金の基礎となる賃金(上にいう時間給、日給、月給)には算入しません(労基法37条5項、労基則21条)。以上の手当については、個人的事情に応じて支払われるものであって、労働の内容や量との関連性が薄いこと等から、割増賃金の基礎となる賃金からは除外されるのです(除外賃金といいます)。
簡単にいえば、「割増賃金の額について、労働の内容や量との関連性が薄い個人的事情によって差が出るのはおかしい」という発想だと考えられるでしょう。しかし、除外賃金に当たらない手当については、割増賃金の基礎となる賃金から除外することは許されません。
また、除外賃金に当たるかどうかは、名称に関係なく実質的に判断されます。
例えば、割増賃金の基礎となる賃金から除外することができる家族手当というためには、扶養家族の人数又はこれを基礎とする家族手当額を基準として算出した手当であることが必要であり、家族手当という名称であっても、内実は、扶養家族の有無、家族の人数に関係なく一律に支給する手当である場合には、割増賃金の基礎となる賃金から除外することは許されません。
また、通勤手当についても、通勤距離又は通勤に要する実際費用に応じて算定される実質を持つ場合には、割増賃金の基礎となる賃金から除外することができますが、これらに関係なく一律に支給する実質を持つ場合には、除外することは許されません。
固定残業代について
「固定残業代」という言葉をご存知でしょうか。求人広告や、労働条件通知書に、「固定残業として●万円支給」などと書いてあることがあります。
この制度は、固定額しか残業代が支払われない制度ではありません。固定残業代とは、「一定の残業時間分」の残業代を固定額で支払う制度です。そのため、「一定の残業時間分」を超えた場合は、超えた時間については別途残業代が支払わなければなりません。
例えば、就業規則が
「毎月30時間の残業に対しては3万円の固定残業代を支払う」
という内容の場合
月20時間の残業でも一律3万円が支給されます。
一方、残業が月35時間だった場合は、3万円に加えて5時間分については、別途残業代が支払われないといけません。
そのため、会社が固定残業代制を採用しているから、これ以上残業代は支払わないといっても、実際の残業時間が上回っている場合は、別途残業代を請求できます。
また、そもそもの固定残業代の金額が、労働基準法が定める基準を下回る場合も、差額分を請求することが可能です。
しかしながら、特に、実際の残業時間がみなし残業時間を上回っている場合でも、残業代が支払われていないことが多いことも事実です。
では、就業規則が、「基本給に残業代を含む」と記載があるような固定残業代制度はどうでしょうか。
残業代の金額や残業時間が明示されていない場合には、そもそも残業代が本当に支払われているのかわかりませんし、仮に支払われているとしても適正な残業代(労働基準法を下回らない残業代)が支払われているかはわかりません。
このように基本給と固定残業代が明確にされない場合は固定残業代の定めは無効として、固定残業代は一切払われていないものと扱い、別途残業代の請求を認めている裁判例もあります。
固定残業代という言葉だけに惑わされず、一度労働条件通知書や就業規則、給与明細に改めて目を通してみてはいかがでしょうか。
注意すべきポイントは、
- 固定残業代について残業時間の上限が設定されているか、
- 基本給と固定残業代が明確に区別できるか、
- 固定残業代が低すぎないか、
という点です。詳しくは、「
固定残業代
」のページをご覧ください。
固定残業代と給与明細に記載があっても実際には、法的には必要な残業代が支払われていないことも多いです。ご不明な点がございましたら、遠慮なく弁護士にご相談ください。
「固定残業代」という言葉をご存知でしょうか。求人広告や、労働条件通知書に、「固定残業として●万円支給」などと書いてあることがあります。
この制度は、固定額しか残業代が支払われない制度ではありません。固定残業代とは、「一定の残業時間分」の残業代を固定額で支払う制度です。そのため、「一定の残業時間分」を超えた場合は、超えた時間については別途残業代が支払わなければなりません。
例えば、就業規則が
「毎月30時間の残業に対しては3万円の固定残業代を支払う」
という内容の場合
月20時間の残業でも一律3万円が支給されます。
一方、残業が月35時間だった場合は、3万円に加えて5時間分については、別途残業代が支払われないといけません。
そのため、会社が固定残業代制を採用しているから、これ以上残業代は支払わないといっても、実際の残業時間が上回っている場合は、別途残業代を請求できます。
また、そもそもの固定残業代の金額が、労働基準法が定める基準を下回る場合も、差額分を請求することが可能です。
しかしながら、特に、実際の残業時間がみなし残業時間を上回っている場合でも、残業代が支払われていないことが多いことも事実です。
では、就業規則が、「基本給に残業代を含む」と記載があるような固定残業代制度はどうでしょうか。
残業代の金額や残業時間が明示されていない場合には、そもそも残業代が本当に支払われているのかわかりませんし、仮に支払われているとしても適正な残業代(労働基準法を下回らない残業代)が支払われているかはわかりません。
このように基本給と固定残業代が明確にされない場合は固定残業代の定めは無効として、固定残業代は一切払われていないものと扱い、別途残業代の請求を認めている裁判例もあります。
固定残業代という言葉だけに惑わされず、一度労働条件通知書や就業規則、給与明細に改めて目を通してみてはいかがでしょうか。
注意すべきポイントは、
- 固定残業代について残業時間の上限が設定されているか、
- 基本給と固定残業代が明確に区別できるか、
- 固定残業代が低すぎないか、
という点です。詳しくは、「 固定残業代 」のページをご覧ください。
固定残業代と給与明細に記載があっても実際には、法的には必要な残業代が支払われていないことも多いです。ご不明な点がございましたら、遠慮なく弁護士にご相談ください。
時効にかかっていないこと
1時効期間
現在の残業代請求の時効の期間は2年間となります。
そのため、過去に遡って残業代を請求しようとしても、原則的に2年間しか遡って請求することはできません。残業代請求を行わずにいると、残業代の請求権は時効により消滅してしまい、その部分においては請求することができなくなってしまいます。
時効は時効を使うという意思表示(これを「援用」といいます。)がされなければ消滅しませんが、会社が時効を援用しないということは稀なので、時効を援用されないという期待はしない方が良いでしょう。
また、時効期間について、不法行為として請求権を3年間と認めた裁判例がありますが、一般的に認められるものではありません。
そのため、残業代請求を行う場合は、現状2年間という短い期間の請求となりますので、請求を行う場合は、早めに決断を行う必要があります。
2民法改正による影響
上記の2年の時効は、民法上1年間の短期消滅時効にかかってしまうところを、特別法である労働基準法によって時効の期間を2年間と労働者に有利に定めています。
しかし、民法の改正によって、短期消滅時効は撤廃され、時効期間は5年となりました。そこで、現状のままでは、特別に労働者を保護していたはずの労働基準法の定めの方が、民法の時効期間よりも短くなってしまいます。
そこで、2年間の時効期間を伸長するための労働基準法改正の議論が行われています。今後は、2年間の時効期間は伸長されることが見込まれています。
3時効を止めるには
時効をとめるためには、裁判を起こすか、会社に残業代について承認してもらう必要があります。
交渉をしている間に時効が完成してしまう可能性があるため、承認に期待するのは危険です。時効完成間際等で、裁判を起こす時間がない場合は、会社に対して残業代を催告することによって、6ヶ月の間に時効の完成を延ばすことが可能です。
完成を延ばすだけなので、6ヶ月間の間に裁判を起こす必要があります。請求をしようかどうか悩んだり、会社との交渉に時間をかけていると、その間に時効になってしまいますので、請求を行う場合は、早めに手続きを行うことが必要になります。残業代の請求権が消滅してしまう前にお早めに弁護士にご相談ください。
残業代請求について